校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第5回ー

 先週と今週の2週にわたって登校日が設定され,生徒の皆さんの元気な声を久々に聞くことができました。校長室の前を通りかかった生徒と目があって,挨拶をしてくれる・・・そんな何気ないシーンが嬉しくて・・・私たち教員にとって疲れを癒やす一番の薬は生徒の笑顔なんだと改めて感じました。


 さて「挑戦する読書」第5回です。今回はいわゆる読書案内本の紹介です。しかし,「挑戦する」読書案内です。手応えあります!
 2009年4月から7月まで,作家である辻原登(つじはら のぼる)氏が東京大学で行った「近現代小説」という講義をもとに構成された本です。14回の講義のうちの10回が収録されています。文学に興味がある生徒は是非10代で読んでおいて欲しい本。東大の講義ですからそう簡単に理解できる内容ではないけれど,読み応えがあって,難しいなあと感じつつも読み進めていくと,いつの間にか講義に引き込まれ,これまで読んだことのない世界文学を手に取ってみたくなること間違いなしです。


 辻原 登『東京大学で世界文学を学ぶ』 集英社文庫
 
 日本近代文学を専攻した私は,近現代の世界文学を読む機会が少なかったのですが,少ない読書経験の中からもう一度読んでみようと,読み返した作品がセルバンテスの「ドン・キホーテ」。この本を読んでから読み返してみると面白さが全然違うのです。また「静かに爆発する短編小説」という副題がついた第4講義では,私はこれまで聞いたことのない,読んだことない作家(後から有名な作家であることはわかるのですが・・・)の短編がいくつも収録されていて,実際に短編を学生と先生が読んでいて,そのやりとりのシーンを読むことができます。辻原氏の解説がとても興味深くて,私はこの本を読破する前に読みたくなって,エルンスト・ブロッホや,ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編を探しに本屋に向かったほどです。
 実際の講義に参加していたかったなあと感じました。でも・・・本になっているので難しいところは読み返して理解できますが,直接その場で聞いていたら理解できなかったかもしれませんね。紹介した講義はこの二つです。
  

  ○第4講義:私をどこかへ連れてって-静かに爆発する短編小説-
  ○第5講義:燃えつきる小説-近代の三大長編小説を読む-
         ①セルバンテス「ドン・キホーテ」
 

  どうでしょう。挑戦する価値ありの一冊です。
                                         令和2年5月29日
                                          校長 小川 典昭