校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第4回ー
6月1日(月)からようやく学校再開です。中高の時差登校,40分授業とはなりますが,一日を通して授業を展開します。生徒のみなさんは先週,今週の登校日を通して連絡のあった内容を十分に理解し,授業再開に備えて下さい。先生方も感染予防に向けて,「学校の新しい生活様式」を確認し,皆さんの登校を待っています。3ヶ月に及ぶ休業中,ロイロノート等での学習に真面目に取り組んだ皆さんの努力に心から敬意を表します。
さて「挑戦する読書」第4回です。今回は国立西洋美術館開館に至るある一人の日本人の物語。それまで西洋の有名な画家の作品を雑誌や複製画でしか見ることができなかった日本の画家たちや,青少年のために全財産をかけて奔走した「松方幸次郎」の物語です。
原田マハ 『美しき愚かものたちのタブロー』 文藝春秋
東京上野公園内,動物園へと向かう右手に国立西洋美術館が建っています。私も何度も足を運んだ美術館ですが,中に入ると「松方コレクション」なる説明書きがあって,読んだ記憶はあるのですが,実はこの実業家である松方幸次郎が,ロンドンとパリで,命をかけて買い集めた作品だったことはあまり気にも留めませんでした。
この本を読んでみると戦争によってその作品がフランス政府によって接収されてしまい,日本での本格的な美術館建設が頓挫してしまいそうになったこと。取り返そうと必死になった当時の吉田茂首相のエピソードや,クロードモネとの親交,ゴッホやルノアールといった有名な画家の作品との出会いの経緯も描かれ,美術好きの人であればどんどん作品の世界に引き込まれていきます。
日本人は世界でも有名な美術好きの国といわれます。「ほんものの絵をみたことがない日本の若者たちのために,ほんものの絵が見られる美術館を創る。それがわしの夢なんだ。」と語った松方幸次郎の理想と信念に触れてみて欲しいと思います。日本に松方幸次郎がいなかったら,画家を目指す青年たちはどうなっていたのだろう・・・
令和2年5月25日
校長 小川 典昭