校長室から皆様へ

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第9回ー

 「挑戦する読書」第9回は,まさに皆さんに挑戦して欲しい本,樋口一葉の「大つごもり」です。一葉といえば5,000円札の肖像で有名ですが,実際に作品を手にした人は少ないのではないでしょうか。その理由は,作品としては短編が多いのですが,何と言っても文体がほとんど古典といってもいいくらい難解になってしまっているからだと思います。明治時代に書かれた小説ですので,会話の部分は皆さんがいま読んでも内容を理解できるのですが,地の文は文語体です。作品に出てくる言葉やもの自体も,解説を読まないとぴんとこないことが予想されます。
 ではなぜ皆さんに紹介するのかというと,作品自体に魅力があるんです!一葉の作品は恋愛ものが多く,かつ悲しい話なのですが,読み終わって心にじーんとくるものばかり。
私は樋口一葉の作品が大好きで,東京の樋口一葉記念館には何度も足を運んでいます。今回皆さんに紹介するのは「現代語訳」です。この本は現代語訳が大胆すぎるきらいはありますが,ストーリーを頭に入れてから原文にあたってもらえればと思います。実は一葉の作品は音読するととっても調子がいいんです。何度も声に出すと,原文のリズムが心地よくなってきます。おすすめです。

  現代語訳 樋口一葉 『大つごもり』 河出書房新社(島田雅彦:訳)

 「大つごもり」のあらすじです。主人公は「お峰(おみね)」。女中として働いています。奉公先はお金持ちなのですが,その息子の石之助がお金を湯水のように遊びに使う放蕩(ほうとう)息子です。あるときお峰は唯一の血縁である伯父(お峰は両親を早くに亡くしています)が病で倒れます。お峰は,何とか休みをもらって伯父のところへ戻ります。すると伯父は,借金の利子を年内に払わないと暮らしていけないから,奉公先から「2円」を借りてもらえないかとお峰にお願いします。
 奉公先の奥さんは大変厳しい人で,借金を申し出てからずっと知らんぷり。お峰が話を切り出しても素知らぬ顔です。そんな時に伯父の8つになる息子がお峰のところにお金をとりに来てしまいます。お峰は自分はどうなってもいいと,引き出しから2円を引き抜いて渡してしまうのです。
 ここからラストシーンまでは内緒です。でもキーマンは放蕩息子の石之助です。
 タイトルの「大つごもり」の意味は大晦日(おおみそか)です。

                        令和2年6月29日
                         校長 小川 典昭